欧州進出時にクリアすべき課題

近年、インターネットをはじめソーシャルメディアの普及もあり、海外の消費者が日本製品の商品を目にする機会も増えてきました。

従来は商社や貿易会社などを通して海外輸出するというのがメインストリームでしたが、最近は自社のオンラインサイトに直接海外から引き合いがあるなどクロスボーダー間の取引きの形も変わってきました。また、他言語のECサイトを立ち上げ直接海外の消費者に向けて販売するブランドも増えてきています。

海外輸出時に避けて通ることができないのは各国の規制です。特に規制に触れない製品もありますが、化粧品の場合、多くの国では厳しい規制が設けられています。なかでも最も厳しいことで知られているのがEU化粧品規制 – Regulation (EC) No 1223/2009 です。

現在、EU規制は世界のスタンダードとなりつつあり、米国をはじめ多くの国が EU規制に同調した内容の規制へ改定を始めています。

EU規制に準拠するためには、厳しい安全性評価をクリアする必要があります。

安全性に関する報告書  - CPSR (Cosmetic Product Safety Report)の作成には、化粧品の最終製品および各原材料に関わるさまざまな資料が必要となります。そして現在の日本では、これらの資料をすべて準備していない製造メーカーも多く、資料収集が最大の難関と言っても過言ではないでしょう。

3つのチャレンジと課題

安全性評価に必要となる資料収集

EU規制で必要となる安全性評価には、各原材料の分析証明書や安全性データシート等を含むさまざまな資料が必要となります。また香料やフレグランスオイル、また植物エキス等にはアレルゲンレポートも必要となります。通常これらの資料は化粧品の原材料メーカーから収集しますが、日本の原材料メーカーでは、これらの資料を準備していない場合もあるため、欧州展開を視野に入れている場合、OEMメーカーへこれらの資料の入手が可能か事前確認することが重要です。海外展開を視野に入れている化粧品ブランドは、これらを考慮して製造開発段階でこれらの資料を入手しておくなど事前準備を行うことで EU規制への対応がスムーズになるでしょう。

特に植物性エキスの場合、必要となるアレルゲンレポートを準備していない原材料メーカーも多く、入手に時間がかかることが多いです。資料を事前に取り寄せておけば、規制対応に必要となるリードタイムはぐっと縮小することが可能です。

成分の適合性

日本の化粧品の安全性評価を行っていると、既に欧州では禁止されている成分が含まれている製品に遭遇することが多々あります。製造メーカーには、EU規制適合の処方を販売していると宣伝しているところもあるようですが、弊社の経験では実際にこれらの製品の成分チェックを行うと既に欧州では禁止リスト入りした成分が含まれていることが判明したり、まもなく禁止入りするとが確定している成分が含まれていることもあります。また、既に欧州では禁止されているナノ形態の原材料を使用しているところもあるため注意が必要です。

EU規制は非常に複雑で、また頻繁に改定案が出されていますが、常に最新の化粧品規制や関連規制を適用し製造を行っている日本の製造メーカーはまだ少ない印象を受けています。化粧品のコンプライアンスチェックには関連規制の確認も必要なため、包括的な評価を行えるEU規制専門のコンサルタントに相談し規制対応していくことは極めて重要です。

ラベルの表示内容と訴求の立証

EU規制では、製品ラベルに記載される内容には厳しいルールが設けられています。日本での販売に使用している製品ラベルをそのまま翻訳すれば良いわけではありません。

例えば欧州では、アレルゲンは成分リストに含まなければいけない場合があります。その他にも注意書きが必要な成分など、EU規制に詳しい専門家が安全性評価を行った上で、製品ラベルに表記すべき内容について確認が必要です。

さらに、日本では特に立証が不要な効能訴求もEU規制では立証が必要となります。多くの日本の化粧品にはさまざまな効能訴求が記載されています。例えば “肌に潤いを与えます” や “髪にツヤを与えます”  という効能訴求を行っている場合、これらを立証できるエビデンスの資料が必要となります。これらの訴求は、エビデンスなしで欧州で使用することはできません。欧州を含む海外展開を視野に入れている場合は、有効性試験や臨床試験などを行い、商品に行っている訴求に対して立証資料を準備しておくのが賢明でしょう。

効率的な欧州展開を行うために必要な対応とは?

化粧品の輸出コンサルティング

このように、日本の化粧品ブランドが欧州展開を行うにはさまざまな課題をクリアする必要があります。いざ引き合いがあってもすぐに販売ができないということがないように、引き合いがあってから準備を行うのではなく、事前に準備を開始することはスムーズな欧州展開には不可欠です。

海外の展示会に出席するディストリビューターやバイヤーが積極的に探している化粧品は、EU規制に既に適合が確認され欧州での登録 – CPNPが完了している商品です。どんなにEU市場でポテンシャルのある魅力的な商品であっても、EU基準での安全性評価が完了していない商品はそれだけでチャンスを逃してしまうかもしれません。

欧州からの引き合いがあった際にチャンスを逃さないためにも、今から準備を始めてはいかがでしょうか。EU規制に関するご相談はこちらからお気軽にお問合せ下さい。