EU化粧品規則1223/2009
規則1223/2009は、化粧品の製造と販売に関する具体的な規則を定めたものであり、同規則第19条では化粧品の製品表示の基準について説明されています。本記事では、同規則の製品表示に関する内容について見ていきたいと思います。
製品表示の具体的な要件を詳しく見ていく前に、まずは化粧品を構成する、あるいは化粧品に使用できる部材についてご説明します。
- 容器:チューブ、瓶、ボトルなど、製品と直接接触する一次包装のこと。
- パッケージ:容器を包む箱やケースのこと。
- クランプ、タグ:化粧品に取り付けることができる装置。同規則第19条第1項d)およびg)で指定される必要な情報の記載が実際上不可能な場合に使用されるもの。
- 使用説明書:製品に追加で添付されるシート。法律で定められた情報をパッケージ上に記載できない場合に使用される。また、製品を適切に使用するために必要または適切と思われる追加の指示が記載される場合もある。
- ラベル:必要な表示内容の印刷やスクリーン印刷ができない、あるいは、それらが望ましくない場合に、容器やパッケージに直接貼付されるもの。
- ピクトグラム:製品に追加でリーフレットが添付されていることを文言で説明する代わりに、一次包装および(または)二次包装上に表示される記号。
欧州における化粧品の製品表示の要件
EU規則1223/2009第19条には、「本条の他の規定に影響を及ぼすことなく、化粧品は、それらの容器およびパッケージに、消えず、読みやすく、見やすい文字で以下の情報が記載されている場合にのみ、市販されるものとする」とあります。
製品表示の各要件については、後述します。
欧州における化粧品の表示規則に準拠する方法
化粧品の表示内容について検討する前に、安全性評価を実施し化粧品安全性報告書(CPSR)を作成することが重要です。この報告書には、製品表示に必要となる警告、正確なINCI名一覧、使用期限・開封後使用期限(PAO - Period After Opening)の日付など不可欠な情報が含まれています。
規則1223/2009第3条には、以下のように述べられています。
「市販される化粧品は、通常の使用条件または合理的に予測可能な使用条件下で使用される場合、人の健康にとって安全であり、特に、指令87/357/EECへの準拠を含む表示、使用および廃棄に関する表示上の説明、第4条で定義される責任者からのその他の指示または情報を考慮したものであるとする。
警告の表示は、第2条および第4条で定義される者が、本規則に規定されるその他の義務を遵守することを免除するものではない。」
したがって、化粧品は、消費者に正しい使い方を案内するだけでなく、合理的に予測可能な使用条件を考慮して、不適切な使用を防止するために必要なすべての情報を提供しなければなりません。CPSRは、化粧品の安全性評価で、製品を市販する前に義務付けられているものです。この評価はEU規則1223/2009に詳述されており、人の健康を守るために厳格な安全性要件を課すことで、より安全な製品を確保することを目的としています。それぞれの化粧品が満たさなければならない具体的要件については、欧州連合の公式ウェブサイトをご参照ください。
すべての化粧品は、容器(内側の表示)とパッケージ(外側の表示)の両方に、特定の必須情報を表示しなければなりません。ラベルの記載内容については、弊社までお問合せ下さい。
これらの項目は、化粧品に関する要件を定めたEU規則1223/2009で指定されていることをご留意ください。ただし、製品表示については、国によってさまざま異なる法律(例えばパッケージおよび廃棄物に関する規則)が規定していることを理解することが大切です。リサイクル記号などの詳細については、表示および包装に関する規則についての記事をご覧いただくことをおすすめします。
製品表示に関して考慮すべき具体的要件と例外
文字の可読性・視認性
第19条第1項で説明される重要な要件の一つは、化粧品に記載される文字は、消えず、容易に読み取れ、かつ視認できるものでなければならないということです。つまり、例えば箱やケースの内側のフラップなど、パッケージの内側に配置させることはできません。
ただし、一般的に正面に配置される製品名と一緒に直接見ることができなくても、容器やパッケージの外側の任意の部分に必要な文字を表示することは認められています。化粧品は使いやすく設計されており、パッケージのすべての部分が見やすく、手に取りやすくなっています。
唯一の例外は、プレパッケージ商品の包装(EU指令76/211/EECで定義されている包装とは異なるもの)における名目上の内容量の表示に関することです。この場合、「e-マーク(℮)」の付いていないプレパッケージ中の化粧品については、二次包装上に、製品名と一緒に見える位置に内容量を表示しなければなりません。ただし、この要件は容器自体には適用されず、内容量は容器のどこに表示しても問題ありません。
耐久性を確保するため、文字は、長時間の経過に耐えるスタンプ、インク、またはラベルを使用して、消えない文字で作成されなければなりません。さらに、プレパッケージに関する規定では、名目上の内容量を表示する際に使用する文字の具体的な文字高さを定めています。
簡略化した記載
責任者名または会社名と所在地に限り、容易に特定できるならば、下記の例の通り、簡略化した形式で記載することができます。
正式名・所在地:Red Italiana SpA via Santa Caterina da Forlì 25 – Monza (MB)
簡略形:Red It. – via SC da Forlì 25 – MONZA
警告
特別な注意事項や成分表などの必要な情報を製品自体に記載することが実際上、不可能な場合は、製品に添付する使用説明書、帯、タグなどに記載することができます。このような追加的な情報伝達手段を用いる場合は、容器とパッケージの両方にその存在について示すことが重要です。これは、「See attached sheet.(添付文書参照)」のような簡略化した表記を含めるか、または規則1223/2009の附属書VII、ポイント1に示されているように「hand-in-book」記号を使用することによって行うことができます。
言語
製品表示上の特定の項目は、製品が市販される国の公用語に翻訳する必要があります。
- 名目上の内容量
- 使用期限(規則1223/2009の附属書VII、ポイント3で述べられている記号を使用しない場合)
- 使用上の特別な注意事項および使用物質に関する警告
- 製品の機能(その外観から明らかな場合を除く)
上記の特定項目だけではなく、いかなる訴求内容も含めて、表示全体をその国の言語に翻訳することが要件となっているEU加盟国もあります。
詳細については、弊社までご相談下さい。
製品表示の各項目について
名目上の内容量
すべての化粧品は、容器とパッケージの両方に、パッケージで包装する時点における内容量について明確に表示しなければなりません。
ただし、名目上の内容量の申告義務には、一定の例外があります。(例:無料サンプル5gm まはた5ml 未満の製品, その他)
曖昧さを含む記載について
内容量に関する記載には、「約」等の用語を使用するなど、不明確または曖昧な表示をしてはなりません。また、「℮」マーク(プレパッケージ商品に対するもの)や「З」マーク(エアロゾル製品に関する逆イプシロン)との混同を招くようなマークの使用も禁止されています。
「℮」マーク
「℮」マークは、化粧品が指令76/211/EECの要求する統計的な生産管理を受けていることを示す、製造者による宣言です。
第19条で述べられている規制に加えて、プレパッケージの化粧品には、プレパッケージに関する法規に従って「℮」の文字を付けなければなりません。この文字は消えないものでなければならず、文字高さは最低3 mmで、特定のグラフィック基準に適合していなければなりません。パッケージに包装される容器の中に化粧品を入れて販売する場合、「℮」マークは容器上ではなくパッケージ上にのみ表示します。ただし、名目上の量と一緒に見えるように配置して表示しなければなりません。つまり、製品の内容量に関する情報が表示されているパッケージの同じ側に配置しなければなりません。
内容量の表示位置
製品の内容量に関する情報をパッケージ上のどこに記載するかについては、特に決まりはありません。容器とパッケージの両方に表示する必要があります。唯一の例外は、内容量の横に「℮」マークが表示されていない、EU指令76/211/EECで規定されるものとは異なるプレパッケージ化粧品に適用されます。こうした製品については、業務用としてのみ使用されるプレパッケージ商品を除き、二次包装上の内容量情報は、製品名と一緒に見える範囲内に記載する必要があります。
文字高さ
計量記号に使用される文字の文字高さも、プレパッケージ商品に関する規格によって定められています。具体的には、製品の名目上の量(名目上の質量または容積)は、キログラムまたはグラム、リットル、 センチリットルまたはミリリットルのいずれかで表さなければならず、最低文字高さの要件を満たさなければなりません。
内容量の表示の後には、対応する計量単位記号を付ける必要があります。したがって、正しい表記は下記の通りです。
50 mLまたは50 mlまたは50 g
ml 50またはg 50と表記するのは誤りです。
グラムは「gr」ではなく「g」と略すことにご注意ください。
使用期限の日付およびPAO (開封後使用期限)
すべての化粧品は、その品質保証期間が30ヵ月未満と計算される場合、容器とパッケージの両方に使用期限の日付を明確に表示しなければなりません。品質保証期間が30ヵ月以上の製品については、容器とパッケージの両方に開封後使用期限(PAO)を表示することができます。PAOを表示する場合は、PAOの月数をどのようにして計算したかについての説明文も必要となります。
使用期限およびPAOマークの使用詳細については、お気軽に弊社までご相談下さい。
製品の使用上の注意および警告
製品の容器とパッケージの両方に、重要な使用上の注意と警告に関する情報を記載することが不可欠です。これらに関する説明は、製品を販売する国の公用語で記載しなければなりません。
この情報を容器やパッケージに直接記載することが不可能な場合、規制では代替方法が認められています。詳細については弊社までお問合せ下さい。
規則1223/2009の附属書III、V、VIに記載されている特定物質については特に注意が必要です。健康に関連する説明を提供するだけでなく、製品にその物質が含まれていることを開示することも義務付けられています。例えば、製品に防腐剤のクロロブタノールが含まれている場合、本規則で指定されている通りに、明確に「クロロブタノールを含む」と表示しなければなりません。
これらの説明や表示は必須であるだけでなく、INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients:化粧品原料国際命名法)を用いて製品に含まれる全成分を二次包装に表示することが義務付けられていることを強調しておきたいと思います。
業務用化粧品
専門業者との明確なコミュニケーションを確保するため、Cosmetics Europeは、COLIPA RECOMMENDATION 24bの「Hair dye labeling - information for professionals(染毛剤の表示 - 専門家向け情報)」に記載されているメッセージを使用することを推奨しています。これらの表示は、読みやすく識別しやすい文字で記載し、パッケージの適切な場所に配置しなければなりません。各製造者が、一次包装および(または)二次包装、ならびに添付文書上の具体的な場所を決定します。
このような情報を記載する責任は、製品を上市する担当者にあります。化粧品の最適な使用条件について包括的な情報を提供するのは、その担当者の責任です。
バッチ番号
すべての化粧品は、製造バッチ番号(バッチを識別できる参照番号)を表示しなければなりません。この情報は、容器とパッケージの両方に記載する必要があります。
製造バッチ番号とは、数字、文字、またはその両方の固有の組み合わせを指し、識別可能な特定の原材料を使用して特定の期間内に製造された特定の量の化粧品(バッチ)を正確に識別するものです。各企業は、バッチ番号の付与に最適と思われるコード化方法を自由に選択することができます。
バッチ番号の表示に関してご質問がございましたら、弊社までご相談下さい。
原産国
EU非加盟国で製造された化粧品のパッケージには、原産国を表示しなければなりません。このような場合、原産国の表示が義務付けられています。スイス、モナコ公国、英国、サンマリノはEUに加盟していませんのでご注意ください。
製品の機能
製品表示には、その外観からすでに明らかな場合を除き、各製品の機能を明確に示す必要があります。
この要件が適用された目的は、製品の実際の機能に関する正確な情報を消費者に提供し、誤用を防止するためです。
この規定を遵守するためには、製品の機能について明記することが重要であり、汎用的な表示の使用や他言語による説明は避けなければなりません。
製品の機能や用途を特定するには、製品名だけでは必ずしも十分でない場合があることに留意すべきです。「乳液」、「化粧水」、「エマルジョン」、「美容液」のような一般的に使用される用語であっても、製品の機能を適切に説明するためには、塗布する具体的な部位について説明を添える必要があります。
成分表
消費者が製品に関する正確な情報を得るために、明確で詳細な成分表を提供することが不可欠です。これにより、消費者は十分な情報を得た上で化粧品を選択し、有害な成分を含む可能性のある化粧品の使用を避けることができます。
成分表は、重量比で1%以上の成分まで、重量比の大きい順に表示し、残りの成分はランダムな順序で表示します。この表は、製品のパッケージの目立つところに表示しなければなりません。
欧州全体における透明性と一貫性を確保するため、INCIとして知られる標準化された命名法が使用されています。各成分のINCI名は、2022年6月に改訂された最新のEuropean Inventory of Cosmetic Ingredients(欧州化粧品成分目録)で確認することができます。
INCI名を使用して成分を記載することが義務付けられています。ただし、INCI名のない成分については、欧州化粧品成分目録に記載されている代替名称を暫定的に使用することができます。
原料供給者または化粧品製造者は、管轄の委員会からINCI名を取得するために必要な措置を講じることが重要です。INCI名を取得したら、直ちに成分表示に使用しなければなりません。
注意しなければならないのは、商品名は化学名やINCI名の代用にはならないことです。
顔料
顔料は、他の成分と共に任意の順序で記載することができます。化粧品用の着色料は、カラーインデックス(CI)番号またはその付録に記載されている指定された名称によって識別される物質です。
規則1223/2009の附属書IVに記載されている着色料の中には、カラーインデックス番号と一般化学名という2つの一般名を持つものがあります。この例として、二酸化チタン(Titanium dioxide/CI 77891)があります。このような場合に従うべきガイドラインは、以下の通りです。ある物質が着色料として製品に使用される場合、カラーインデックス番号に対応するINCI名を使用しなければなりません。ただし、その成分の機能が着色料とは異なる場合(乳白剤、研磨剤など)は、化学名に対応するINCI名を使用しなければなりません。
香料および香気成分
香料および香気成分(およびそれらの原料)は、それぞれ「パルファム(parfum)」および「アロマ(aroma)」と表記する必要があります。
不純物
以下の2種類の物質は成分とはみなされないため、成分表に含めるべきではありません。
- 原材料に含まれる不純物
- 混合物に使用されるものの、最終製品の組成には含まれない技術的に用いる二次的物質
当局が最初にチェックするのは製品ラベル
本記事でご紹介した内容は、化粧品に適切な表示を行うための一般的なガイドラインです。しかし、特定の場合や訴求内容によっては、さらなる考慮が必要となる場合があります。化粧品の表示方法についてご不明な点がございましたら、弊社までお知らせください。
皆様が規制を遵守できるよう、お手伝いさせていただきます。