長い間、容器・包装(以下、「容器包装」)やその廃棄物について、環境の持続可能性という観点で、透明性を持たせてほしいという問題提起が行われてきました。

欧州では早くも1997年には、容器包装に適用される環境ラベルのシステムが立案されました。それは自主的なものであり、現在ほど「ファッショナブル」なものではありませんでしたが、ほとんどの企業が採用しました。

最近になって、イタリアなど欧州の一部の国で、この件に関してより具体的なルールが定められました。

2020年9月11日、イタリアでは、廃棄物に関する指令(EU)2018/851、容器包装および容器包装廃棄物に関する指令(EU)2018/852を反映させた2020年9月3日付立法令第116号が発布されました。イタリアでは各企業がすでにこの件について情報の一本化を進め始めていますが、2度の延期を経て、正式な発効は2023年1月1日の予定となっています。

立法令第116号第3条第3項c)は、「環境規制」に関する2006年4月3日付立法令第152号(およびその後の改正と修正条項)の第219条第5項に変更をもたらしました。その変更は「容器包装廃棄物の管理に関する情報提供基準」に関連するものです。

しかし、その新しい基準によって導入されたラベル表示義務は、解釈の余地を残しています。ラベル上で報告するべき内容、必須要素、どこまでが義務であるかの境界線が明確に定められていないのです。また、その義務に対応するためのタイミングという点でも、企業に大きな不安を与えています。

当該立法令のあらましと解釈上の疑問点

実際、この立法令では、すべての容器包装は「容器包装の回収、再利用、再生、リサイクルを促進するため、および消費者に容器包装の最終的な行き先に関する正しい情報を提供するため、該当するUNI技術規格で定められた方法に従い、欧州委員会が採択した決定に準拠して適切にラベル付け」されなければならないと定められています。

また、生産者は、欧州委員会決定97/129/ECに基づき、容器包装の識別と分類の目的で、使用されている容器包装の素材の種類を表示する義務を負います。前述の第219条第5項は、他のラベル表示義務とは無関係に、容器包装の環境ラベルに関することを目的とするものです。

主にどのような点が問題となっているのでしょうか? - この立法令ではUNI規格を一般論として参照するものとなっており、環境に関わる内容をラベルで表示しようとする企業は、UNI規格に従わなければならないことが示唆されています。しかしこの立法令は、企業がそうした規格に従ってラベル表示しなければならない情報については明確にしておらず、自主的な判断に任せる内容になっています。

- プラスチック製の容器包装については、その素材のすべてが決定97/129/ECで識別されるわけではありません。したがって、ポリマーまたはその組み合わせからなるプラスチック製容器包装については、プラスチック素材の識別に関するUNI 1043-1規格およびリサイクルポリマーを識別・認識するためのUNI 10667-1規格を参照する必要があります。

- また、多層構造を持つプラスチック製容器包装に使われる素材の識別も課題となっています。この点でも、決定97/129/ECは特定の識別コードを規定していません。UNI 11469規格によることでしか、複数のポリマーで構成される構造体の組成については伝達することができません。

- 環境に関する自己宣言。環境ラベルに関して欧州委員会が採択した「決定事項」のうち、現在のところ、決定97/129/ECが唯一の参照資料です。したがって、ブランドが容器包装の環境品質に関する自主的な種類の追加情報(文言、シンボル・ピクトグラムまたはその他の類似メッセージ、環境主張)を伝達したい場合、UNI EN 14021規格を参照しなければなりません。 要するに、技術面に関する規格・決定は考慮すべきものがたくさんありますが、当該立法令の要件を正しく満たすためには、その複雑さゆえに、間違いなく専門家によるサポートが必要となっています。

 

当該立法令の定義と概念

この立法令が言及している、提供されるべき情報の受け手とは誰のことでしょうか?

イタリア消費者法典(第3条第1項)において、消費者または利用者は「実施される企業的、商業的、職人的、専門的活動に無関係な目的で行動する自然人」とされています。
同様に、2006年立法令第152号は、第218条第1項v)において、消費者とは職業上の活動の範囲外で、自己の使用のために容器包装、物品または包装された商品を購入または輸入する者であると定めています。
したがって、あらかじめ包装済みの製品の形で、最終消費者に販売または無償で提供される容器包装は、この規格の義務の範囲に含まれます。また、BtoBの販売を意図した容器包装(そのまま、またはあらかじめ包装済みの製品の形で、「職業人」すなわち「企業的、商業的、職人的、専門的な活動を行う自然人もしくは法人、またはその仲介者」(消費者法典第3条第1項)に対して販売される包装)についても同様です。
それでは、どのような容器包装が対象となるのでしょうか?
前述のとおり、これについては、容器包装それ自体、そしてBtoC(およびBtoB)活動において最終消費者に販売または無償で提供される容器包装が対象となります。
素材の識別において、立法者は、用途の差別化要素を想定してきませんでした。その結果、業務用の容器包装についても、決定97/129/ECに基づく識別と分類から除外する要素はありません。すなわち、すべての容器包装が識別・分類の対象となります。
› 決定97/129/ECに基づく素材の識別コードの添付に関しては、その義務は生産者に明示的に課せられています。
› 決定97/129/ECが、容器包装の組成に含まれるプラスチックポリマーの具体的な識別について規定していないなら、自主的に上述のUNI規格に頼ることができます。
要約すると

› すべての容器包装(一次、二次、三次)上に、生産者は決定 97/129/EC で要求される英数字コードを表示しなければなりません(この決定で明示されていないポリマーまたはその組み合わせで製造されたプラスチック製容器包装については、 想定されていないプラスチック素材の識別のためのUNI 1043-1規格およびリサイクルされるポリマーを識別・認識するためのUNI 10667-1規格を参照できることを考慮します)。

› すべての容器包装は、目的を達成するために最も適切かつ効果的であると企業が考える形態と方法でラベル付けされなければなりません。

› また、消費者向けの容器包装には、廃棄物の分別収集を促進するための適切な文言が含まれていなければなりません。

実際問題として行わなければならないこと

報告すべき表示内容は、以下の通りとなっています(当該立法令により、一部は任意、一部は必須です)。
必須事項:
1. 容器包装の種類(例:ボトル、ジャー、キャップ、レデューサー)
2. すべての容器包装について考慮すべき、容器包装素材のコード化(参照:(特定の附属書に示される)英数字コードによる容器包装素材の識別システムを確立する決定97/129/EC)
3. 廃棄物分別収集のための消費者への表示。これは最終消費者向けの容器包装の、すべての手作業で分離可能な構成要素に関することです(参照:CONAIガイドライン(素材の種類や回収に関する助言に従うことや、自治体の関連規定を常に確認することを助言するもの))
手作業で分離できない構成要素についてはどうするべきか?
本体と、手作業で分離できないその他の付属する構成要素(粘着ラベル、分離できないキャップや蓋、プラスチック窓など)で構成される容器包装については、本体の素材の識別コードと回収に関する内容(本体の素材に準ずる)を表示しなければなりません。
可能なケースでは、決定97/129/ECに従って、素材の識別コードのみを添付することができます。これは手作業で分離できない構成要素にも適用されます。しかし後者には回収に関する内容を表示する必要はありません。
ただし、容器包装が本体から手作業で分離可能な構成要素を有する場合、それらの各構成要素については必ず決定97/129/ECに従った英数字コードを記載しなければなりません。また、回収に関する情報も(上述の通り)記載しなければなりません。容器包装(プラスチック、金属、有機物、それ以外、段ボール)の行き先に関するデータは、その構成要素を適切にリサイクルする目的で、正しい回収について伝達することになります。自治体によって取り扱いが異なるものについては、容器包装には常に、最終的には地域で求められる要件に従って該当する回収について確認するよう示すメッセージを記載しなければなりません(例:「廃棄物の回収については、地域によって異なります。お住まいの自治体における規定をご確認ください」)。
任意事項:
1. (決定97/129/ECで想定されたプラスチック容器包装識別システムを裏付ける)UNI EN ISO 1043-1規格に準拠したプラスチック素材のシンボル
2. ポリマーの識別コードの前に、リサイクルされることを示す「R」の文字を付ける(UNI EN ISO 10667-1に基づく)
3. 一つのポリマー材を構成するプラスチック製構成要素の特定(UNI EN ISO 11469に準拠し、したがってその記入法に従う)
4. 手作業で分離可能な各構成要素に適用される、品質面でそれぞれ異なる回収方法に関する追加情報
5. 容器包装のリサイクル性またはその組成中の二次原料の含有量を伝達するために使用される、自己宣言による主張(UNI EN ISO 14021を参照、例:メビウスサイクル)。生分解性および堆肥化性に関する要求事項への準拠も、当該規格に従って宣言する必要があります。

識別コードの提供者

容器包装のサプライヤーが識別コードを指定します。ユーザーはそれを確認する責任があります。
 決定97/129/ECに従い、容器包装が手作業で分離できない異なる素材で構成されている場合、その容器包装は「複合素材」であると定義されます。
そうした容器包装は、処理(コーティング、金属被覆、ラミネート、ラッカー塗装など)によって、またはそれぞれの素材を組み合わせることで製造することができます。
そうした複合素材で構成される容器包装の英数字コードは、決定97/129/ECの附属書VIIで規定されています。当該附属書では、主素材と副素材(重量で判定)の種類に応じたそれぞれ異なるコード付けについて説明されています。
多層構造を持つ容器包装を構成する複合素材を正しく識別するために、副素材の重量が容器包装の総重量の5%未満である場合、その容器包装は単一素材の容器包装と同様であると見なされます。したがって、重量で判定した主素材に従ってラベル付けされます。それ以外の場合、コード付けについては複合素材製の容器包装であれば附属書VIIに準じ、多層プラスチックであれば附属書Iにある通りコード「7」を報告します。この閾値は、複数の副素材を含む容器包装で、そのうちの1つの重量が5%未満である場合にも適用されます。そのような素材は識別目的のためには考慮されません。逆に、副素材の重量の合計が5%を超える場合、その容器包装は、複合素材に関する決定 97/129/EC 附属書VIIに規定されたコードでラベル付けされます。
こうした簡略化は、実施決定(EU)2019/665 で採用された手法をヒントにしており、それによると加盟国は、消費とリサイクルの目標に関するデータを公表する目的で、複数の素材からなる容器包装組成物の個々の素材を報告することが求められています。しかし、「ある素材が包装単位のうち重要ではない部分を構成し、その質量が包装単位の総質量の5%を超えない場合、この要求は免除される」ことが可能です。
消費者に対するさらなる配慮:UNI 11686規格
この規格は、ゴミ箱を識別するための色やその他の視覚的要素を規定しています。これによって、最終消費者が、どの廃棄物をどのゴミ箱に入れることができるのかを容易に認識することができ、よりスムーズに廃棄することができます。
さまざまな都市や自治体で、市民が廃棄物の分別収集に接する機会が増えています。そのため、カラーコードでゴミ箱を識別させることで、いつも暮らしている自治体でなくても、分別収集に困らなくなります。

紙類
有機性廃棄物
プラスチック類
金属類
ガラス類
その他(それ以外の廃棄物)

環境ラベル例

紙製ケースに入っているディスペンサー付きのシンプルなバイアル瓶について考えてみましょう。これら手作業で分離できる3つの構成要素は、立法令で規定された義務に従ってラベル付けされなければなりません。

種類	          素材	         分別先
ボトル	          PVC 3	     プラスチック類
ディスペンサー	  PP 5	     プラスチック類
箱	          PAP 21	 紙類

必ず自治体の規定を確認すること


本記事では読者の理解のために、上記の表では日本語で記載しています。当該立法令はイタリア国内で有効であり、国の言語による情報の表示が義務付けられているため、容器包装上の表示ももちろんイタリア語で記載されなければなりません。

さらなる明確化

容器包装がリサイクル可能と見なされる場合


容器包装は、技術規格UNI EN ISO 13430に基づき、すなわち既存のリサイクル技術に適した以下の基準を満たすとき、リサイクル可能であると見なされます。

› 容器包装を効率的にリサイクルする技術が存在していること

› リサイクル工程を効率的に行うための最低限の量が確保できること

› リサイクル工程の下流で得られる素材の市場が存在すること

これらの基準を満たすかどうかは、具体的な調査・研究による評価が行われなければなりません。

容器包装が堆肥化可能と見なされる場合

容器包装は、UNI EN ISO 13432技術規格に適合している場合、生分解性かつ堆肥化可能であると見なされます。これは、94/62包装指令との関連で、「堆肥化によって再資源化可能な容器包装の要件」を証明する欧州整合規格です。

生分解性および堆肥化性の認証は、認定された第三者機関によって発行されます。これらの機関の認定は、単一の国家認定機関(イタリアではAccredia)によって独立性と公平性に関して認定の手続きが行われる形がとられます。Accrediaのウェブサイトでは、認証の発行を行うことができる認定機関・試験所の一覧をデータベースで参照することができます。

最後に、どのような容器包装が分別収集可能でしょうか?
容器包装は、現在の技術によってリサイクル可能かどうかにかかわらず、質の高い分別収集のための適正なルール(例:容器包装の中身を空にすることが常に可能)に反しない範囲で、分別収集に出すことができます。実際、リサイクルに回せる容器包装はそのような流れに従って回収され、それ以外のものはエネルギー回収に回されます。

容器包装のリサイクル性の評価は、企業が容器包装上に記載することを選択できる追加情報の一つです。ただし、セルロース系素材の割合が総重量の60%未満の紙類など、複合素材製の容器包装(または手作業で分離できない異なる素材の構成要素を持つもの)は除きます。そのような低含有率の場合は、環境への影響が明らかであるため、容器包装のリサイクル性が打ち消され、損なわれています。リサイクル工程では、水と電力を消費して、100 kgの容器包装から85 kg以上の乾燥廃棄物と150 kg近くの湿潤廃棄物が発生し、埋め立て処理されることになります。リサイクルできない紙や段ボールなので、生産・使用する企業には、「廃棄物は『その他の廃棄物』として出すこと」と表示して、廃棄物の取扱いと密接につながっている環境負荷を最小化することを推奨します。

なお、特殊なケースも多いため、この記事はあくまでも、とても幅広いテーマへの入門ガイドに過ぎないことをご承知おきください。このテーマについて常に最新の情報を入手したい、あるいは、イタリアやその他の市場でどのようにご自身の製品を販売できるか知りたいとお考えでしょうか?ご自身の製品を、消費者と私たちが暮らす地球の両方にとって安全な、環境に配慮した製品にすることを求めていらっしゃいますか?詳細は弊社までお問合せ下さい。